トマ・ピケティ【21世紀の資本】r>gや累進的資本税などわかりやすく解説

Introduction:トマ・ピケティとはどんな人?

トマ・ピケティとは、

経済的不平等を専門とし、パリ経済学院を設立したフランスの経済学者

です。

ピケティが著した「21世紀の資本」は世界中でベストセラーとなった経済学書です。

本記事では、ピケティの「21世紀の資本」を①トリクルダウン仮説を否定 ②経済格差 ③累進的資本税という3点から解説していきます。

ピケティ【21世紀の資本】 要点
・トリクルダウン仮説を否定:経済成長をしても富は富裕層が独占し、貧困層は貧しいまま
・クズネッツの逆U字仮説を批判:経済格差は拡大
・r>g:格差のメカニズムは資本収益率と経済成長率の不等式
・経済成長の停滞:人口増加の鈍化
・格差の構造:「不労所得生活者の社会」と「超能力主義社会」
・世襲型資本主義:労働よりも相続によって豊かさが決定する社会
・累進的資本税で格差を是正

Part 1:内容解説 【21世紀の資本】

1−1 トリクルダウン仮説を否定

トリクルダウン仮説とは、

富裕層が豊かになることで、自然と貧困層に富が滴り落ちていくという仮説

です。

この経済理論は、市場経済によって経済的な問題が解決するという自由放任主義の立場に基づいています。

トリクルダウンとは、シャンパンタワーが頂点から最下層まで水が滴り落ちるという比喩です。

しかし、ピケティはこの仮説を否定しました。

ピケティは経済的なデータを用い、経済発展によって貧困層は豊かになるのではなく、経済格差が拡大していることを指摘しました。

富裕層ばかりに富が蓄積され、貧困層には行き渡らないということです。

1−2 経済格差

「21世紀の資本論」は主に経済格差について書かれた著作です。

①クズネッツの逆U字仮説批判 ②r>g ③経済成長の停滞 ④格差の構造 ⑤世襲型資本主義という4点から解説していきます。

1−2−1 クズネッツの逆U字仮説批判

クズネッツの逆U字仮説とは、

資本主義の発展に伴って格差は拡大するが、最終的には縮小し、不平等が是正されるという仮説

です。

これは、アメリカの経済学者のサイモン・クズネッツが提唱したもので、X軸に経済発展、Y軸に社会の不平等をとり、逆U字の曲線になると主張しました。

クズネッツ曲線

しかしピケティはデータに基づいてこの仮説を否定しました。

1910年から1970年のアメリカにおける所得格差は逆U字になっているが、それ以降は格差が拡大していると分析しました。

また、クズネッツの逆U字仮説が発表されたのは1955年であり、第二次世界大戦という特殊な経済状況しか反映していないと批判しました。

さらにこの仮説は、冷戦期において、資本主義の長所をアピールするという西側のイデオロギーを後押しするものであるとピケティは考えました。

1−2−2 資本収益率>経済成長率(r>g)

ピケティは、経済格差のメカニズムを資本収益率r>経済成長率gという不等式で説明しました。

資本収益率(Return):株などの資産運用によって得られる利益率
経済成長率(Growth):労働による所得の伸び率

ピケティは、資本収益率が経済成長率を常に上回っているから格差が拡大していると指摘しました。

一般的に、資産運用などによって利益を得るのは富裕層であり、労働によって利益を得るのは貧困層です。

つまり、r>gの時は資産を持っている富裕層はより裕福になり、労働でのみ富を得る貧困層は豊かになることはなく、格差は拡大していくということです。

1−2−3 経済成長の停滞

ピケティは経済成長が停滞した国では、格差が拡大し続けると主張しました。

経済成長は、人口増加生産性向上によって支えられています。

歴史的に見ても、産業革命や技術革新といった生産性の向上と、人口の増加によって経済成長は達成されてきました。

しかし、戦後の人口増加が著しかった時代と比べて、近年は経済成長が停滞してきています。

また、人口増加の鈍化は遺産相続の重要性を高めます。

生まれる子どもの人数が減少すると、一人当たりが受け取る遺産の割合が増えることで、富裕層の子どもはそのまま豊かになることができます。

最初から富を持っているものがそのまま豊かになるという構造から抜け出せなるということです。

このように、人口増加の鈍化に伴って経済成長が停滞し、経済格差を固定化させます。

これは、経済格差の構造につながります。

1−2−4 格差の構造

ピケティは、格差を「不労所得生活者の社会」「超能力主義社会」という2種類に分類しました。

1つ目の不労所得生活者の社会は、相続などによって蓄積された富や土地を所有することによって不労所得で生活をし、低賃金で労働者を雇うような社会です。

これには、中世のヨーロッパなどが当てはまります。

2つ目の超能力主義社会は、現代の資本主義のような能力・結果至上主義に基づいて、トップ1%の経営者が半分以上の富を独占するような社会です。

このような状況では、莫大な遺産を相続するか、秀でた才能で大成功を収めることでしか、富裕層にはなれないということです。

1−2−5 世襲型資本主義

世襲型資本主義とは、

労働量よりも相続する量によって豊かさが決定される社会

です。

人口増加が鈍化、経済成長の停滞、超能力主義社会といった特徴が挙げられる現代の資本主義では、どれだけの財産を相続するかによって豊かさが決定されます。

また、相続が世代を超えて受け継がれていくため、経済格差は固定されていきます。

つまり、豊かな家庭に生まれることができるかどうかでほとんど豊かさが決定してしまう社会ということです。

豊かさを決定するにおいて、相続は賃金所得よりもはるかに重要であるとピケティは考えました。

このような、生まれた環境によって経済格差が決定されている社会は公正でないとし、ピケティは累進的な資本税の導入を提案しました。

1−4 累進的資本税

ピケティは、資本主義における拡大し続ける格差を是正するには、累進的な資本税を課すべきであると主張しました。

資本を多く所有している富裕層に対し、累進的課税をすることで格差が是正するということです。

資本の力が強大である現代では、労働によって豊かになることは不可能であるため、資本に対する課税をすることが重要であるというのがピケティの考えです。

ピケティ自身も、世界規模の累進的資本税の実現可能性には疑問を抱いていますが、莫大な富を独占するトップ層に対する強大な課税の必要性は強く主張しています。

現行の累進的な所得税や財産税だけでなく、全ての資本に対しての資本税がより効果的であるというのがピケティの提案です。

Part 2:おすすめの書籍

もっと「21世紀の資本論」・ピケティを学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。

Part 3:まとめ

いかがでしたか?

「21世紀の資本論」をまとめると、

ピケティ【21世紀の資本】 まとめ
・トリクルダウン仮説を否定:経済成長をしても富は富裕層が独占し、貧困層は貧しいまま
・クズネッツの逆U字仮説を批判:経済格差は拡大
・r>g:格差のメカニズムは資本収益率と経済成長率の不等式
・経済成長の停滞:人口増加の鈍化
・格差の構造:「不労所得生活者の社会」と「超能力主義社会」
・世襲型資本主義:労働よりも相続によって豊かさが決定する社会
・累進的資本税で格差を是正

以上です。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

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