マーガレット・サッチャー(Margaret Hilda Thatcher)とは、
です。
サッチャーは、保守的で強硬な姿勢から、「鉄の女(Iron Lady)」と呼ばれました。
イギリス初の女性首相かつ、イギリス初の保守党の女性党首です。
本記事では、サッチャリズムの時代背景・政策内容を解説していきます。
・政策:ビッグバン・労働組合と対立
Part 1:時代背景
サッチャリズムの政策が取られたのは、イギリスの時代背景が影響しています。
1−1 福祉的経済政策
第二次世界大戦後のイギリスでは、世界恐慌の教訓からケインズ経済学や厚生経済学に基づいた福祉的な政策が主流になっていました。
ケインズ経済学・厚生経済学についてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。
Introduction:ケインズはどんな人? ジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes)とは、 1883年〜1946年のイギリス出身の経済学者で、ケインズ経済学の祖 です。 ケインズは、20世紀にお[…]
Introduction:厚生経済学とは? 厚生経済学とは、 倫理学と密接な関係がある経済学の規範理論的研究で、ミクロ経済学の一分野 です。 経済学には、環境経済学や農業経済学、労働経済学など、様々な分野を経済学的観点から分析し[…]
世界恐慌で景気が悪化したことで、それまで主流だった古典派経済学・新古典派経済学の有効性が疑われ、ケインズ経済学の福祉的な政策が有効であると考えられました。
古典派経済学・新古典派経済学についてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。
Introduction:古典派経済学・新古典派経済学とは? 定義 古典派経済学:労働価値説に基づいた経済学の総称 新古典派経済学:ケンブリッジ学派のマーシャルの経済学やオーストリア学派、ローザンヌ学派を指す経済学[…]
大きな政府として市場に介入して企業を国営化することで産業を保護しました。
世界恐慌といった景気が悪い時期は有効だった福祉的な政策ですが、景気が向上すると、政府の介入が非効率を生み出し始めました。
その結果、「英国病」という状況を生み出しました。
1−2 英国病
英国病とは、
です。
伝統的な福祉政策をとっていたイギリスは、景気が上向きになっても福祉的な政策を継続したために競争力が低下し、経済成長が停滞しました。
政府が市場に介入し続けた結果、国際競争力の低下や膨大な社会保障費による財政悪化といった問題が発生しました。
また、充実した失業保険や高税率の所得税といった福祉的政策が労働のインセンティブを奪い、勤労の意欲低下という問題が発生しました。
さらに、オイルショックが発生し、不況にもかかわらず物価が上昇するスタグフレーションが発生しました。
このような状況から、労働組合が賃上げを求めるストライキを行なったり、公共サービスの労働者がストライキを行いました。
その結果、ごみ収集や病院、学校といった公共サービスが停止し、国民は大きな不満をかかえ、「不満の冬」と呼ばれました。
このような福祉的政策の限界によって不満が蓄積したイギリスでは、サッチャーが台頭する準備が整いました。
Part 2:サッチャリズムの政策内容
サッチャリズムは、伝統的な福祉的政策とは対照的な政策を展開しました。
2−1 ネオリベラリズムに基づいた政策
サッチャリズムは、ネオリベラリズム(新自由主義)に基づいた政策です。
ネオリベラリズム(Neoliberalism)とは、
です。
ネオリベラリズムは市場の効率性を評価し、政府による介入は非効率であると考え、小さな政府を目指します。
ネオリベラリズムに基づいた政策は
などが挙げられます。
サッチャーは、様々な規制を撤廃することで、企業間の競争を促進しました。
既得権益や特定の事業を保護するための規制は、経済的効率性を損なうという考えに基づいて、規制緩和が行われました。
市場原理では、企業の競争の促進によって経済成長が達成されると考えます。
またサッチャーは、国営の水道や電気、鉄道、航空といった事業を民営化し、政府による非効率的な運営をやめました。
国営企業を民営化することで、政府支出を抑えることに成功しました。
また、福祉的政策をやめ、社会保障費を抑える緊縮財政政策を行いました。
企業のために所得税を減税しましたが、消費税は増税し、国民に負担を強いました。
このようにサッチャーは、規制緩和・民営化・緊縮財政といったネオリベラリズムに基づいた政策を展開しました。
2−2 ビッグバン(金融自由化)
ビッグバン(Big Bang)とは、
です。
サッチャーは、アメリカの経済学者であるミルトン・フリードマンが主張したマネタリズムに基づいて、金融政策を行いました。
フリードマンについてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。
Introduction:フリードマンはどんな人? ミルトン・フリードマン(Milton Friedman)とは、 1912年〜2006年にアメリカで活躍したシカゴ学派を代表する経済学者 です。 フリードマンは、マネタリスト・新[…]
マネタリズムとは、
です。
ロンドン証券取引所は市場の効率性を高めるために、
・売上げ手数料の自由化
・単一資格制度廃止
・外部資本への開放
という改革を行いました。
競争を制限するような手数料を撤廃したり、外部資本へ開放することで競争を促進させました。
単一資格制度とは、
です。
単一資格制度が廃止されることで金融の自由化が進展しました。
このようにサッチャーは、金融市場を自由化することで市場の効率性を高めようと試みました。
しかし、競争のために外国へ金融市場を解放した結果、外国資本よってイギリス国内の企業が淘汰される「ウィンブルドン現象」がおきました。
2−3 労働組合との対立
サッチャーは、サッチャリズムを行う上で障害となっていた労働組合と対立しました。
当時政治的影響力が強かった労働組合は、労働者の権利や労働環境改善などを主張し、福祉的な政策を求めていました。
労働組合は、福祉的政策と正反対な政策を進めるサッチャーと敵対することになります。
サッチャーは、労働法を改正することで労働組合を弱体化させました。
労働組合側はストライキで対抗しましたが、警察による弾圧といったサッチャーの権力に敗北しました。
労働組合を弱体化させ、政治的影響力を奪うことに成功したサッチャーは、ネオリベラルな政策を促進させました。
以上のような政策を行った結果、戦後最悪の失業率を記録しました。
また、所得格差が拡大し、貧困層が増えることで犯罪率も増加しました。
サッチャー政権の評価は、ネオリベラリズムを信奉する人とそうでない人の間で大きく分かれています。
Part 3:おすすめの書籍
もっと「サッチャリズム」を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。
Part 4:まとめ
いかがでしたか?
「サッチャリズム」をまとめると、
・政策:ビッグバン・労働組合と対立
以上です。
Web大学 アカデミアは、他にも様々なジャンル・トピックを解説していますので、是非ご覧ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。