カール・ポランニー(Karl Polanyi)とは、
です。
ポランニーは経済史の研究を元に、経済人類学という理論を提唱しました。
また、その観点から自由主義経済に疑問を抱き、「大転換」にまとめました。
本記事では、ポランニーの「大転換」の内容を解説していきます。
Part 1:【大転換】 内容解説
ポランニーは、「社会に埋め込まれた経済」から経済に埋め込まれた社会への大転換が起きたと主張しました。
「大転換」を①社会に埋め込まれた経済 ②大転換の2点から解説していきます。
1−1 社会に埋め込まれた経済
ポランニーは、資本主義によって社会と経済のあり方が逆転したと主張しました。
資本主義が浸透する以前は、経済的な制度が社会に埋め込まれた「社会に埋め込まれた経済」という状態だったが、資本主義によって「経済に埋め込まれた社会」に変化してしまったという考えです。
これは、社会的な制度や関係が経済的な制度や市場経済によって決められているということです。
ポランニーは、市場経済が浸透する以前の「社会に埋め込まれた経済」を①互酬・クラ交易 ②再分配 ③家政という3点から説明しました。
1−1−1 互酬・クラ交易
互酬とは
です。
市場経済が支配する以前の社会では「互酬」が頻繁に行われており、そうした相互依存関係が強く構築されていました。
また、そのような互酬が環状につながっている状態のことを「クラ交易」と言います。
クラ交易はパプア・ニューギニアの民族で行われている交易であり、互酬によって支え合うことで共同体を維持しています。
しかし、経済活動が中心の社会では、互酬が行われなくなりました。
市場経済によって全てのものが商品化し、相互扶助関係が破壊されてしまったということです。
互酬が取引や契約に変化し、贈り物で支え合う事は無くなりました。
1−1−2 再分配
ポランニーは、社会に埋め込まれた経済の性格として、2点目に「再分配」を挙げました。
市場経済が支配する以前は、共同体における共通の首長が再分配を行なっていました。
共同体に属する人々は中心に贈り物を納め、それを再分配することで支え合っていました。
しかし、市場経済によって再分配機能が低下し、それによって支え合うことが不可能になりました。
1−1−3 家政
社会に埋め込まれた経済の性格として、3点目に「家政」が挙げられます。
この場合の家政とは、一家のための生産・自給自足を意味します。
市場経済が浸透する以前の社会では、各家族が自給のための生産をおこなっていました。
自分たちが必要な分を生産し、余った作物を互酬や再分配を通じて共同体内で循環していました。
しかし、資本主義によって分業が進み、農作物は全て商品になりました。
さらに、余剰作物を売ることで富を蓄積できるようになるため、与え合うことよりも販売・取引することが当然になりました。
自給自足や与え合うこと、再分配で生きていた社会は、市場経済の導入によって、経済に組み込まれてしまいました。
1−2 大転換
ポランニーが唱えた、「社会に埋め込まれた経済」から「経済に埋め込まれた社会」への大転換を①全国市場の形成 ②労働・土地・貨幣の商品化という2点から解説していきます。
1−2−1 全国市場の形成
ポランニーは大転換の要因の1つ目に「全国市場」を挙げました。
資本主義が登場したことで全国市場が形成され、あらゆる場所で市場が開かれるようになりました。
全国市場が出現した要因は、国家の干渉であるとポランニーは考えました。
当時の重商主義国家は、戦争に備えるために全国市場を整備しました。
つまり、富の蓄積によって国を富ませようと考える重商主義国家は、市場を全国に展開することで戦争に必要な資金を貯めようと考えました。
それ以前では、各地に局地的市場が点在しており、全国的に展開された市場ではありませんでした。
また、遠隔地との交易も市場ごとに行われており、それぞれの市場で終始していました。
重商主義国家の政策で、局地的市場をつなげることで全国市場が形成されました。
1−2−2 労働・土地・貨幣の商品化
ポランニーは大転換の要因の2つ目に「商品化」を挙げました。
労働・土地・貨幣は、元々商品ではなかったが、全国市場・資本主義の浸透によって、それらが商品になりました。労働=人間
労働=人間
土地=自然
貨幣=購買力の象徴
であるため、本来商品ではない人間や自然が商品化されていることをポランニーは危惧しました。
ポランニーは、このような商品を「擬制商品」と呼び、それらの弊害を指摘しました。
労働・土地・貨幣の商品化によって、社会は荒廃します。
① 労働の商品化は、人間の死をもたらします。
人間が商品として扱われるようになり、激しい労働による疲弊や飢餓などに脆弱になることで、人間を死に追いやるということです。
② 土地の商品化は環境破壊をもたらします。
本来は自然の一部であった土地が商品として扱われることで、自然そのものの価値が失われ、経済的な資本として扱われます。
また、経済的発展のために使用される土地は搾取され、環境が破壊されます。
③ 貨幣の商品化は恐慌を引き起こし、企業を破産に追い込みます。
手段であるはずの貨幣が商品化することでインフレや恐慌が起き、多くの企業が倒産を経験することになります。
ポランニーは、このような全てのもの・活動が市場の経済活動のために行われる状態を「自己調整的市場」と呼びました。
そして、以上のような弊害を持ちながら浸透していく市場経済を「悪魔のひき臼」と表現しました。
悪魔のひき臼=自己調整市場によって、社会が引かれてしまうということです。
ポランニーは、市場の拡大に抵抗するためには市場規制をする必要があると主張しました。
Part 2:おすすめの書籍
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Part 3:まとめ
いかがでしたか?
「大転換」をまとめると、
以上です。
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最後までご覧いただきありがとうございました。