【ネオリベラル制度論】国際関係論におけるネオリベラル制度論をわかりやすく解説

Introduction:ネオリベラル制度論とは?

ネオリベラル制度論(neoliberal institutionalism)とは、

国際関係論におけるリベラリズムを発展させ、国際的諸制度の役割に着目した理論

です。

ネオリベラル制度論は、ネオリベラリズムと呼ばれる場合がありますが、経済的な新自由主義を意味するネオリベラリズムとは異なります。

ネオリベラル制度論は、国際関係論のリベラリズムを発展させたものとして成立しました。

国際関係論におけるリベラリズムについてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。

関連記事

Introduction:リベラリズム(自由主義)とは? リベラリズム(Liberalism)とは、 国家間の相互依存可能性や国際協調を重視する国際関係論における理論 です。 リベラリズムは、リアリズムと同様に国際関係論で最も基[…]

リベラリズム

本記事では、ネオリベラル制度論が発展した時代背景や特徴を解説していきます。

【ネオリベラル制度論】 要点
・ネオリベラル制度論:国際関係論におけるリベラリズムを発展させ、国際的諸制度の役割に着目した理論
・特徴:国際的制度に着目・国家の合理的行動・国際協調の可能性

・時代背景:デタント崩壊・アメリカのパワー低下・制度の構築が進展

Part 1:理論的特徴

ネオリベラル制度論は、リベラリズムを受け継ぎつつ、リアリズム的な考えも取り入れています。

1−1 国際的諸制度の役割

ネオリベラル制度論は、国際社会における諸制度の役割に着目します。

諸制度は、国際法WTO(世界貿易機関)といった国際機関レジームが挙げられます。

ネオリベラル制度論は、このような国際的諸制度があることで、国際秩序が安定していると考えます。

覇権国のアメリカのパワーが相対的に低下した国際社会において、不安定な情勢が懸念される中でも秩序が安定しているのは、レジームが役割を果たしているからです。

このようにネオリベラル制度論は、国際社会における制度が国際社会の秩序を安定させている役割があると考えます。

1−2 国家は無政府状態の国際社会で合理的に行動

ネオリベラル制度論は、「国家が無政府状態の国際社会で合理的に行動する」と考えます。

国際社会は、国家より上位の権力の「世界政府」が存在しない「無政府状態(アナーキー)」であるという前提があります。

そして、国家は国益を追求して合理的に行動すると仮定しています。

これは、リアリズム的な考え方に影響されています。

国際関係論におけるリアリズムについてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。

関連記事

Introduction:リアリズム(現実主義)とは? リアリズム(現実主義)とは、 アナーキー(無政府状態)の国際関係を国家中心主義や権力闘争といった点から分析する理論 です。 リアリズムは、国際関係・国際政治を学ぶ上で、最も[…]

リアリズム

ネオリベラル制度論が発展した時代背景から、リアリズムの影響を受けました。

しかし、ネオリベラル制度論がリアリズムと異なるのは、「国家は利益のためには国際協調という合理的な行動を行う」と考えた点です。

時代背景については、Part2で詳しく述べます。

1−3 国際協調の可能性

ネオリベラル制度論は、国際協調の可能性を楽観的に捉えています。

国際諸制度が機能することで、国際協調が可能になると考えます。

リアリズムは、国益を追求することは権力闘争につながるため、国際協調に悲観的な考えを展開しましたが、ネオリベラル制度論は国際協調に楽観的な立場をとっています。

あくまで合理的に利益を追求するため、利益になると判断すれば対立も協調もするということです。

1−4 リアリズム・リベラリズムとの比較

ネオリベラル制度論は、リベラリズム的な考え方とリアリズム的な考え方の両方に影響を受けています。

3つの理論を比較したのが以下の表です。

ネオリベラル制度論は、リアリズムを受け継いで発展させたネオリアリズムと統合し「ネオネオ統合」と呼ばれました。

ネオリアリズムについてまとめた記事は、以下のリンクからご覧いただけます。

関連記事

Introduction:ネオリアリズム(新現実主義)とは? ネオリアリズム(Neorealism)とは、 無政府状態の国際社会の前提のもと、安全保障を重視する理論 です。 ネオリアリズムは、構造的現実主義とも言われています。 […]

ネオリアリズム

Part 2:時代背景

ネオリベラル制度主義が登場してきた時代背景として3つの特徴が挙げられます。

2−1 デタントの崩壊と第2次冷戦

まず初めに、デタント(緊張緩和)の崩壊があります。

デタントは、戦争の危機にある国家同士が緊張を緩和することです。

冷戦中、軍事力が対等になったことや共通の利益を見出したことから、米ソはデタント政策を取りました。

しかし、1970年代にはデタント政策に対して、アメリカ国内での批判が高まりました。

最終的に、1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻したことによって、デタントは崩壊しました。

このようにしてデタントが崩壊した国際社会の様子を「第2次冷戦」「新冷戦」と言います。

この時代では、デタントの失敗から「安全保障」や「軍事力」の重要性を唱えるリアリズム的な見方が有力になりました。

このような時代背景がネオリベラル制度論に、リアリズム的な考え方の影響を与えています。

2−2 アメリカのパワー低下

2つ目の時代背景として、アメリカのパワーが相対的に低下したことが挙げられます。

2度の対戦を通じて圧倒的な力を有したアメリカですが、その覇権が徐々に衰退していきました。

日本や中国、第3世界の国々が経済的に成長することで、相対的にアメリカの地位が低下していきました。

このように、アメリカのパワーの低下もネオリベラル制度論の登場の時代背景として挙げられます。

2−3 レジームや制度の構築が進展

冷戦後の国際社会では、レジームの形成や制度の構築が進みました。

核保有に関する国際法や貿易に関する条約、経済的援助に関する枠組みなどが成立しました。

例えば、GATT(関税および貿易に関する一般協定)といった経済協定やSALT(戦略兵器制限交渉)などが挙げられます。

ネオリベラル制度論が発展したのは、以上のような3つの時代背景があります。

Part 3:おすすめの書籍

もっと「ネオリベラル制度論・国際関係論を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。

Part 4:まとめ

いかがでしたか?

ネオリベラル制度論」をまとめると、

【ネオリベラル制度論】 まとめ
・ネオリベラル制度論:国際関係論におけるリベラリズムを発展させ、国際的諸制度の役割に着目した理論
・特徴:国際的制度に着目・国家の合理的行動・国際協調の可能性

・時代背景:デタント崩壊・アメリカのパワー低下・制度の構築が進展

以上です。

Web大学 アカデミアは、他にも様々なジャンル・トピックを解説していますので、是非ご覧ください。

最後までご覧いただきありがとうございました。

広告
ネオリベラル制度論
最新情報をチェックしよう!
>