ジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes)とは、
です。
ケインズは、20世紀における最重要人物とも言われるほどの大経済学者で、経済学に大きな貢献をしました。
マクロ経済学の基礎を築いたり、ケインズ経済学を確立したりするなどの偉業を達成しています。
本記事では、「雇用・利子および貨幣の一般理論」の内容を解説していきます。
Part 1:内容解説「雇用・利子および貨幣の一般理論」
「雇用・利子および貨幣の一般理論」は、失業・所得格差という資本主義の問題を政府はどのように解決していくべきかについて述べられています。
「雇用・利子および貨幣の一般理論」の内容を、①均衡財政による経済的リスク ②国債発行 ③有効需要の原理 ④失業 ⑤利子率と利潤率という5つから解説していきます。
1−1 均衡財政による経済的リスク
均衡財政とは、
です。
ケインズ以前では均衡財政の体制が取られており、常に財政の支出と収入が等しい状態を保っていたため、経済的なリスクがありました。
そのリスクを説明していきます。
まずは、経済学をマクロな視点で考えます。
社会には、政府・企業・家計という3つのアクターが存在します。
① 不景気に陥ったとき、企業の売り上げが減少します。
② そして、給料減少によって家計の収入が減少します。
③ そうすると、政府の税収が減少します(所得税など)。
④ 政府は税収が減ると、それ相応の支出しかしなくなり、政府支出も減少します。
⑤ それにより、雇用創出などが困難になり、不景気が加速していきます。
このように均衡財政では、一度不景気に陥ると、負のスパイラルに陥ってしまうというリスクがありました。
これでは恐慌に陥る可能性があるため、政府による財政政策によって、経済をコントロールできるようにしなければならないとケインズは考えました。
では、ケインズはどのような政策をすればいいと言ったのでしょうか。
それは、国債の発行です
1−2 国債発行
均衡財政では収入と支出が常に等しいため、収入に応じて支出を減らしていました。
しかし、政府が国債を発行する、すなわち借金をすることで不景気を乗り越えることができるということです。
不景気時に国債を発行することで、政府は公共事業(道路工事など)などを行い、それの伴った雇用を創出することができます。
そうすることで、企業側も売り上げが上がり、家計の給料も上昇します。
そして税収も増え、好景気の循環へと転換します。
結果的に増えた税収によって借金を返済すれば、借金を増やすことなく不景気から脱却できると、ケインズは主張しました。
1−3 有効需要の原理
有効需要の原理とは、
です。
有効需要は、貨幣の裏付けがある需要です。
これは、単に欲しいと思うだけでなく、それを買うお金を持っている必要があるということです。
反対にいうと、貨幣的裏付けのない需要は有効ではないということです。
貨幣に裏付けされていれば、有効な需要として換算され、国の経済水準を決定するのに用いることができます。
有効需要が大きいほど、景気が良いと言えます。
買う能力のある人々の需要が高まれば、経済活動も活発となり、景気は良くなるはずであると考えました。
ケインズは、有効需要の不足は景気後退や失業を生んでしまうと考えました。
1−4 非自発的失業
ケインズの資本主義経済の問題意識は、完全雇用が実現できず、失業者が出ることでした。
失業者は、自発的失業者と非自発的失業者がいます。
自発的失業者:賃金や職場環境などを理由に、自発的に就業を拒否することによる失業
非自発的失業者:働く能力・意思はあるが、雇用機会がないことによる失業
完全雇用とは、
です。
ケインズは非自発的失業者をなくすためには、政府による公共事業を増やすべきであると主張しました。
不景気脱却のメカニズムにパートでも言及したように、公共事業は雇用創出と企業の売り上げ上昇をもたらすという考えに基づいています。
実際、世界恐慌によって多大なる失業者が発生したアメリカでは、F.ルーズベルト大統領のニューディール政策によって経済は回復されたと言われています。
ニューディール政策は、公共事業を積極的に行い、大規模な雇用を実現しました。
このようにケインズは、失業は政府の公共事業といった政策によって解決されると主張しました。
1−5 利子率と利潤率
ケインズは、公共事業とは別の方法による景気の回復方法についても述べました。
それは、利子率と利潤率という考え方です。
利子率:銀行に預けておいた時に増えるお金の割合
利潤率:事業に投資した場合に増えるお金の割合
利子率と利潤率の高低によって、投資家と中央銀行の行動は変わってきます。
まず、利子率<利潤率の場合を考えます。
利子率が利潤率よりも低い時、投資家は事業投資を行います。
銀行に預けるよりも事業投資をした方が儲かるからです。
反対に、利子率>利潤率の場合を考えます。
利子率が利潤率よりも高い時、投資家は銀行に貯蓄をします。
事業投資をするよりも銀行に預けておいた方が、儲かります。
しかしこれでは経済が滞り、景気は悪くなります。
そこで中央銀行は、利子率を引き下げる金融政策を行います。
それにより、利子率が利潤率よりも低くなれば事業投資が増え、景気対策になるということです。
利子率<利潤率の場合
投資家:事業投資
中央銀行:何もしない
利子率>利潤率の場合
投資家:貯蓄
中央銀行:利子率の引き下げ→投資家は事業投資へ
ちなみに、景気対策は財政政策と金融政策の2種類しかありません。
財政政策は、政府による公共事業などが挙げられます。
金融政策は、中央銀行が金利を変動させることなどが挙げられます。
Part 2:おすすめ本
もっと「雇用・利子および貨幣の一般理論」を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。
Part 3:まとめ
いかがでしたか?
「雇用・利子および貨幣の一般理論」をまとめると、
以上です。
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最後までご覧いただきありがとうございました。