Introduction:J・Sミルはどんな人?
ジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill)とは、
1806年〜1873年にイギリスで活躍した、政治哲学者、哲学者、古典派経済学者
です。
ミルの思想は、自由主義や社会民主主義、リバタリアニズムなどに重要な影響を与えました。
ベンサムや父親であるジェームズ・ミルの影響を受け、「功利主義論」を著したり、「自由論」、「経済学原理」などの名著を残しています。
古典派経済学の重要な一人であるミルは、経済学史を学ぶ上で欠かせない人物です。
本記事では、「経済学原理」の内容を解説していきます。
Part 1:内容解説「経済学原理」
「経済学原理」とは、
1848年に出版された、経済学の原理について書かれたミルによる著書
です。
この経済学原理を、①生産と分配 ②所有権 ③共産主義への態度という3つのポイントから解説していきます。
- 生産:自由放任 ・分配:人為的な操作
- ミルのロック批判:所有権の保障は絶対ではない
- 所有権は労働の成果とは限らない:機会の平等が重要
- 共産主義を否定:自由と個性がなくなる
- 具体策:土地所有権への制限
3−1 生産と分配の区別
ミルは、経済学における生産と分配を区別しました。
その区別とは、
生産:自由放任に任せるべき
分配:人為的に変更可能
です。
ミルは生産について、スミスやリカードと同じように自由放任によって効率的な生産が可能になると主張しました。
しかし分配は自由放任ではならないと唱えました。
分配は人為的制度によって決まるものであり、意図的に分配の操作が可能であると考えました。
富裕層に多くの富を流すなどの人為的な操作が可能であることを考慮すべきと述べました。
これが、ミルの考えた生産と分配の区別です。
3−2 所有権
ミルは、所有財産制の維持が国家の目的ではないため、所有権の保護は絶対ではないと主張しました。
これは、ジョン・ロックの社会契約論と対立します。
ロックの社会契約論とは、
国家が所有権を確立する代わりに国民の信任を得るという社会契約を結ぶことで社会秩序が形成されるという考え
です。
ロックの社会契約論についてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。
国家の目的
ロック:国家の目的は所有権の確立
ミル:国家の目的は社会利益の増進(功利主義)
ロックは所有権が自身の労働の成果であると主張しましたが、ミルはこれに反対します。
ミルは、遺産相続や譲渡などによって所有権を得ることもあるため、所有権は労働の成果とは限らないと唱えました。
所有権の源泉
ロック:所有権は労働の成果
ミル:所有権は労働の成果とは限らない(相続や譲渡)
ミルは、私有財産制の理想は、機会の平等を保障することだと考えました。
単純な所有権の保護は、不平等を生むきっかけになるため、所有物を得るための機会を保障することが大切であるということです。
ミルは、所有権の保障はそれが社会の効用を高めるか否かによって判断されるべきという功利主義的アプローチを採用しました。
この、所有権の議論は共産主義への態度に関する議論へと繋がっています。
3−3 共産主義への態度
共産主義を採用することは、所有権を否定することになります。
所有権を保障すべきか否かは、効用を高めるか否かという功利主義に基づいて判断されます。
結果的に、ミルは共産主義を否定しました。
共産主義は①自由の保障がない ②個性がなくなるという理由から、所有権を保障し、共産制以外の方法で改革をすべきであると主張しました。
具体的な社会改革方法は、土地所有権への制限です。
土地の所有権は労働の成果ではなく、相続や譲渡によって得る場合が多いため、これを社会全体の利益となるような制限をすることは許されると主張しました。
以上のように、共産主義は否定しましたが、土地所有権への制限は認めました。
Part 2:おすすめ本
もっとJ・Sミル・「経済学原理」を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。
Part 3:まとめ
いかがでしたか?
「経済学原理」をまとめると、
- 生産:自由放任 ・分配:人為的な操作
- ミルのロック批判:所有権の保障は絶対ではない
- 所有権は労働の成果とは限らない:機会の平等が重要
- 共産主義を否定:自由と個性がなくなる
- 具体策:土地所有権への制限
以上です。
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最後までご覧いただきありがとうございました。