Introduction:メンガーはどんな人?
カール・メンガー(Carl Menger)とは、
1840年〜1921年にオーストリアで活躍した、近代経済学の創始者の一人
です。
メンガーは、ジェボンズ・ワルラスらとともに「限界効用理論」を同時期に唱えた新古典派の経済学者です。
古典派経済学の労働価値説から脱却し、効用価値説に基づく経済学を展開しました。
本記事では、『国民経済学原理』の効用価値説について解説していきます。
Part 1:内容解説:効用価値説
効用価値説とは、
財の価値は、各人が主観に基づいて判断する効用によって決まるという経済理論
です。
ではなぜ、効用によって価値が決まるのでしょうか。
メンガーは、経済財という概念を用いて価値の説明を行いました。
メンガーが証明した過程を、①労働価値説と効用価値説の比較 ②財の種類:経済財と非経済財 ③価値という3つのステップで解説していきます。
・効用価値説:価値は効用によって決定
・労働価値説:価値は労働によって決定
・需求>支配可能数量 → 経済財
・需求<支配可能数量 →非経済財
・価値:経済財によってどれほど効用が改善されたか
・限界効用:追加的な1単位による効用の増加分
1−1 労働価値説と効用価値説
先述したように効用価値説はメンガーが唱えた理論ですが、それ以前は労働価値説を基調とする古典派経済学が主流でした。
労働価値説とは、
労働が価値を生み出すものであり、分業などによって生産性を高めることにより富を増やすことができるという考え
です。
労働価値説は、「財・サービスの価値は労働によって付与される。労働が価値の源泉である」ということです。
古典派経済学は労働価値説に基づいた経済学派であり、有名な学者はアダム・スミスやマルサス、リカードなどが挙げられます。
それに対して、効用価値説とは、
財の価値は、各人が主観に基づいて判断する効用によって決まるという経済理論
です。
効用価値説は、「財・サービスの価値は効用によって付与される。効用が価値の源泉である」
ということです。
新・古典派経済学は効用価値説に基づいた経済学派であり、メンガー・ジェボンズ・ワルラスらによって提唱されました。
労働価値説:古典派経済学(スミス・マルサス・リカード)
効用価値説:新古典派経済学(メンガー・ジェボンズ・ワルラス)
1−2 財の種類:経済財と非経済財
ここからは、メンガーが唱えた「価値」を説明するための前提として、財の種類について解説していきます。
メンガーは、
財:人間の欲望を満足させるもの
需求:欲望を満たすのに必要な財の数量
支配可能数量:自分が自在に扱うことのできる財の量
と定義しました。
自分の支配可能数量と需求の関係によって、財の種類が決定されると主張しました。
① 需求>支配可能数量 → 経済財
1kgの肉が食べたい(需求)>0.5kgの肉しか持っていない(支配可能数量)→ 経済財
この場合、肉は経済財になります。自分が欲しい量よりも少ない数しか持っていないため、貴重な肉を効率的に使おうとする経済活動を行います。
② 需求<支配可能数量 →非経済財
1Lの水が飲みたい(需求)<10Lの水を持っている(支配可能数量)→ 非経済財
この場合、水は非経済財になります。自分が欲しい量よりも多くの量を持っているため、効率的な経済活動を行いません。
メンガーはこの概念を用いて、「価値」を定義しました。
1−3 価値とは?
メンガーは初め、経済財こそ価値のある財であると考えました。
しかし人間の満足・効用の上昇は、経済財の支配量によって決まると唱えました。
したがって、その財によってどれほど効用が改善されたのかが重要であるということです。
このような考えに基づいて、効用価値説が提唱されました。
メンガーは、財そのものの価値は限界効用によって決まると唱えました。
限界効用とは、
財を一単位追加して消費することによって得られる効用の増加分
です。
言い換えると、
限界効用:「追加的に一単位消費を増やした時にどれだけ効用が増加するのか」
です。
これを、水を例にして説明します。
以上の図から分かるように、追加的な一単位が財の価値を決定するということです。
この概念は、限界効用理論として、ジェボンズ・ワルラスらとともに唱えられました。
限界効用理論についてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。
Introduction:限界効用理論とは?
限界効用理論とは、
効用価値説を基調とし、限界効用によって経済的な望ましさが決定されるという経済学の理論
です。
限界効用理論は、経済学を学ぶ上で避けては通れない概念であり、非常に重[…]
Part 2:おすすめ本
もっとメンガー・効用価値説を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。
Part 3:まとめ
いかがでしたか?
効用価値説をまとめると、
・効用価値説:価値は効用によって決定
・労働価値説:価値は労働によって決定
・需求>支配可能数量 → 経済財
・需求<支配可能数量 →非経済財
・価値:経済財によってどれほど効用が改善されたか
・限界効用:追加的な1単位による効用の増加分
以上です。
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最後までご覧いただきありがとうございました。