【長期サイクル論】国際政治経済学における長期サイクル論をわかりやすく解説

Introduction:長期サイクル論とは?

長期サイクル論(Long-cycle Theory)とは、

国際関係・政治・経済において、長期的に見ると循環(サイクル)が起きていると考える理論

です。

長期サイクル論は、一般的な国際政治経済学の理論と異なり、戦争や経済の長期的変動に着目して、そのメカニズムを解明しようと試みます。

本記事では、3種類の長期サイクル論を解説していきます。

【長期サイクル論】 要点
・長期サイクル論:国際関係・政治・経済において、長期的に見ると循環(サイクル)が起きていると考える理論

・経済の長期サイクル:半世紀ごとに景気循環

・戦争の長期サイクル:大戦争→休息期→補足戦争→泰平→大戦争

・覇権サイクル論:覇権国の台頭→覇権国の勝利→覇権国の成熟→覇権国の衰退→新たな覇権国の台頭

Part 1:3種類の長期サイクル論

長期サイクル論は、大きく3種類に分類できます。

1−1 経済の長期サイクル論

1つ目に、経済の長期サイクル論です。

経済の長期サイクル論では、「コンドラチェフの波」を前提にしています。

コンドラチェフの波とは、

約50年の周期で、好景気と不景気という景気循環が起こるという経済理論。景気循環論。

です。

経済学では、好況と不況が一定の周期で循環することを前提としています。

まず初めに、資本蓄積が起きることで投資が促進されます。

資本蓄積は、生産活動を通じて生み出された剰余価値を資本に変え、さらに生産を拡大していくことです。

投資によってさらに生産活動が活発になって、景気が上昇します。

しかし、資本蓄積・投資が徐々に減退し、生産活動が停滞することで不景気の時代に突入します。

企業は不景気の中で、利益を確保するためにコストカットを試みます。

そこで、生産性向上のために技術革新(イノベーション)が起き、生産活動が活発化します。

その結果、資本蓄積・投資が促進され、景気が上昇します。

経済の長期サイクル論では、これが約半世紀の周期で起こると考えています。

1−2 戦争の長期サイクル論

2つ目に、戦争の長期サイクル論です。

戦争の長期サイクル論は、イギリスの歴史学者であるアーノルド・J・トインビー(Arnold Joseph Toynbee)が最初に唱えました。

トインビーは、

大戦争→休息期→補足戦争→泰平→大戦争

という戦争の長期サイクルがあると考えました。

そして、このサイクルが起きる原因は世代交代にあると考えられています。

まず初めに、地域を統一しようとする勢力が戦争を仕掛け、それを阻止する勢力と対決します。

それによって引き起こされる大戦争を経験した世代は、精神的なダメージ戦争のトラウマによって、戦争を回避しようとします。

それが、大戦争後の休息期となります。

休息期に育った世代は戦争のトラウマがないため、戦争を起こす可能性が高まります。

しかし、大戦争を起こすほどではなく、補足戦争が起きます。

補足戦争を経験した世代は、精神的なダメージによって戦争を回避する傾向が高まり、「泰平」の時代が訪れます。

泰平の期間に育った世代は戦争への忌避感が希薄であるため、再び大戦争を起こす可能性が高まります。

これは、4世代が1世紀で一巡するため、1世紀でサイクルが1周すると仮定します。

トインビーは、15世紀以降のヨーロッパにおける戦争からこの法則を導きました。

1−3 覇権サイクル論

長期サイクル論には、覇権国がサイクルすると考える覇権サイクル論(覇権循環論)があります。

覇権サイクル論は、アメリカの国際政治経済学者であるロバート・ギルピン(Robert Gilpin)とアメリカの政治学者であるジョージ・モデルスキー(George Modelski)によって提唱されました。

覇権サイクルは、

覇権国の台頭→覇権国の勝利→覇権国の成熟→覇権国の衰退→新たな覇権国の台頭

という流れで起こります。

軍事力や経済力を手に入れた覇権国が台頭し、国際秩序の安定を試みます。

そして一定の安定期間が訪れ、覇権国が成熟していきます。

徐々に衰退していく覇権国に対して、新たな覇権国となり得る「挑戦国」が台頭してきます。

この時期は、覇権国と挑戦国の勢力争いによって、国際秩序が不安定になり、戦争が起こりやすくなります。

挑戦国がこの争いに勝利することによって、新たな覇権国が誕生するというサイクルです。

この長期サイクルは、1500年代まで遡ります。

大航海時代において、ポルトガルが覇権国として台頭しましたが、約1世紀でオランダがポルトガルを破り、覇権国になりました。

その後、「パクス・ブリタニカ」という言葉があるように、軍事的・経済的に世界一となったイギリスが覇権国として台頭しました。

しかし2度の世界大戦を通じて、アメリカが覇権国へと変化しました。

現代では、アメリカという覇権国に対して、中国という挑戦国が台頭していると考える人もいます。

覇権国がいることによって国際秩序が安定すると考える、覇権安定論があります。

覇権安定論についてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。

関連記事

Introduction:覇権安定論とは? 覇権安定論(Hegemonic Stability Theory)とは、 世界的に圧倒的なパワーを有した覇権国がいることで国際社会が安定するという理論 です。 覇権安定論は、リアリズム[…]

覇権安定論

以上のように、長期サイクル論は3種類に大別できます。

Part 2:おすすめの書籍

もっと「長期サイクル論」・国際関係論を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。

Part 3:まとめ

いかがでしたか?

「長期サイクル論」をまとめると、

【長期サイクル論】 まとめ
・長期サイクル論:国際関係・政治・経済において、長期的に見ると循環(サイクル)が起きていると考える理論

・経済の長期サイクル:半世紀ごとに景気循環

・戦争の長期サイクル:大戦争→休息期→補足戦争→泰平→大戦争

・覇権サイクル論:覇権国の台頭→覇権国の勝利→覇権国の成熟→覇権国の衰退→新たな覇権国の台頭

以上です。

Web大学 アカデミアは、他にも様々なジャンル・トピックを解説していますので、是非ご覧ください。

最後までご覧いただきありがとうございました。

広告
長期サイクル論
最新情報をチェックしよう!
>