相互依存論(Interdependence Theory)とは、
です。
相互依存論は、国際関係論のリベラリズムの系譜にある理論です。
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本記事では、相互依存論の特徴を解説していきます。
・エドワード・モースの相互依存論:軍事的相互依存と経済的相互依存
・複合的相互依存
・敏感性:相互依存関係にある国の変化がどれだけ早く、どれくらいの範囲で影響するのか
・脆弱性:相互依存関係の変化に対応するためにかかるコスト
・パワーの概念:「相手をどれだけ操作できるか」
・非国家アクターの影響力の注目
・安全保障のみをハイポリティクスとみなすのは間違いである
Part 1:相互依存論の特徴
相互依存論は、1970年代に国際社会における経済の重要性が高まったことによって登場した理論です。
ここでは、エドワード・モースの相互依存論と複合的相互依存論の2つを解説していきます。
1−1 エドワード・モースの相互依存論
アメリカの経済学者であるエドワード・L・モース(Edward Lewis Morse)は、相互依存論を2種類に分けて考えました。
1つ目に、軍事的相互依存です。
軍事的な相互依存は、軍事同盟や条約、基地の設置などを通じた相互依存関係のことです。
例えば、日本がアメリカの核の傘の下にいることや、米軍基地を日本各地に設置しているといった相互依存の関係が挙げられます。
軍事的相互依存は、ゼロサムゲームという特徴があります。
「誰かが得した分誰かが損をする=得点と失点の総和(サム)がゼロになる」というのがゼロサムゲームです。
軍事的相互依存は、国際社会をリアリズムに基づいた考え方であると言えます。
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2つ目に、経済的相互依存です。
経済的な相互依存は、国際貿易や経済的な援助を通じた相互依存関係のことです。
例えば、国家間の貿易や途上国への経済援助などが挙げられます。
経済的相互依存はゼロサムゲームの軍事的相互依存と異なり、ポジティブサムゲームという特徴があります。
ポジティブサムゲームは、ゼロサムと違って参加者全員が利益を得られるような状態のことです。
そして経済的相互依存関係では、国家同士の協調が可能であり、戦争は経済的な損失であるため、武力行使を忌避するという特徴があります。
経済的な相互依存関係が深まるほど、それを破壊するような軍事的行動はお互いにとって損失となるため、危険性が低くなります。
モースは、以上のように2種類の相互依存を唱えました。
1―2 複合的相互依存論
複合的相互依存論は、「Power and Interdependence(権力と相互依存)」の中で、アメリカの国際政治学者であるロバート・コヘイン(Robert Owen Keohane)とジョセフ・ナイ(Joseph Samuel Nye)が唱えました。
複合的相互依存論には、4つの特徴があります。
1−2−1 敏感性と脆弱性
コヘインとナイは、「敏感性」と「脆弱性」という概念を用いて相互依存論を唱えました。
敏感性(Sensitivity)とは、
という意味です。
これは、相互依存関係にある国の変化に対して、どれだけ敏感に反応するかということです。
敏感性の例として、オイルショックが挙げられます。
紛争などで中東の情勢が不安定になると、中東諸国と石油の貿易を行っている国では、石油価格が高騰します。
日本ではトイレットペーパーの買い占めが起きるなど、相互依存関係にある中東で変化が起こると、日本にも影響が出るということです。
このような影響がどれだけ早く、どのような範囲で及ぶのかというのが「敏感性」です。
脆弱性(Vulnerability)とは、
という意味です。
相互依存関係にある国が外交や経済政策に変化が生じると、関係維持のために負担しなければならないコストが生じる場合があります。
オイルショックでは、中東の原油価格高騰によって石油の貿易を行っている国が負担しなければならないコストのことを「脆弱性」と言います。
石油の貿易という相互依存関係を維持するためには、コストを負担しなければなりません。
1−2−2 パワーの概念
複合的相互依存論におけるパワーは「相手をどれだけ操作できるか」ということを意味します。
一般的にパワーは、軍事力や経済力といった物質的なパワーを意味します。
しかしコヘインとナイは、相互依存関係におけるパワーは、相手をどれだけ巧みに操作できるかという「影響力」がパワーであると考えました。
2人は敏感性と脆弱性を重視したため、相手にどれだけ影響を与えられるかがパワーの源泉であると考えました。
オイルショックでは、中東諸国の状況・政策が世界各国に影響を与えたため、中東諸国のパワーが大きいと言えます。
1−2−3 非国家アクターの影響力
複合的相互依存論は、非国家アクターの影響力にも注目します。
現代の国際社会では、主権国家だけでなく、国際NGOやWHOといった国際機関、多国籍企業といったアクターが台頭しています。
グローバル化に伴い、それらの影響力や結びつきが強固になってきています。
非国家アクターは国境を超えて活動をし、「ヒト・モノ・カネ」の移動が激しくなっています。
複合的相互依存論は国家間の相互依存関係だけでなく、非国家アクターの結びつきにも注目します。
1−2−4 ハイポリティクスとローポリティクス
複合的相互依存論は、安全保障のみをハイポリティクス(高次元政治)とみなすリアリズムを批判しました。
リアリズムは国際政治おいて、経済や環境をローポリティクス(低次元政治)と見なし、安全保障のみがハイポリティクスであると考えました。
しかしコヘインとナイは、国際社会の相互依存関係が深まっている現代において、経済や環境の重要性が高まっており、ローポリティクスとみなすのは間違っていると主張しました。
Part 2:おすすめの書籍
もっと「相互依存論」・国際関係論を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。
Part 3:まとめ
いかがでしたか?
「相互依存論」をまとめると、
・エドワード・モースの相互依存論:軍事的相互依存と経済的相互依存
・複合的相互依存
・敏感性:相互依存関係にある国の変化がどれだけ早く、どれくらいの範囲で影響するのか
・脆弱性:相互依存関係の変化に対応するためにかかるコスト
・パワーの概念:「相手をどれだけ操作できるか」
・非国家アクターの影響力の注目
・安全保障のみをハイポリティクスとみなすのは間違いである
以上です。
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最後までご覧いただきありがとうございました。