デモクラティックピース論(Democratic Peace Theory)とは、
です。
デモクラティックピース論は民主的平和論とも言われ、マイケル・ドイルやブルース・ラセットによって発展されました。
本記事では、デモクラティックピース論の特徴と批判を解説していきます。
・特徴:構造モデル・規範モデル
・源流:カント「永遠平和のために」
・批判:民主主義国家同士の戦争・民主制によって戦争がないのかが不確か
Part 1:デモクラティックピース論の特徴
デモクラティックピース論は民主主義国家同士が戦争を行わないという楽観論の立場に立っています。
1−1 民主主義国家同士が戦争を行わない理由
デモクラティックピース論は、2つのモデルを用いて民主主義国家同士が戦争をしない理由を述べました。
1つ目に、構造モデルです。
透明性の確保された民主主義のプロセスという構造を通じて意思決定を行うことで、戦争は起きないということです。
国民投票や議会での議論と言った民主的なプロセスを通じて意思決定を行うことを前提としています。
国民は自分に身の危険が降りかかるリスクを認識しているため、戦争を仕掛けるような政治家は選挙で選ばれません。
これを「構造モデル」と言います。
2つ目に、規範モデルです。
民主主義国家同士は、話し合いや交渉によって問題を解決しようとするという規範があるため、戦争に発展しないという考えです。
暴力的・軍事的な独裁体制とは異なり、民主主義国では議論を通じた決定を行うため、民主主義国家同士の戦争が起きないということです。
民主主義国家同士が戦争を行い、暴力で解決することは民主主義の否定になるため、戦争に走るとは考えにくいという考えです。
これを「規範モデル」と言います。
1―2 源流:カント「永遠平和のために」
デモクラティックピース論の源流は、イマニュエル・カント(Immanuel Kant)の「永遠平和のために」であると言われています。
カントは、共和制の国家は、主権者が戦争による被害を避けたがるため、自衛を除いた戦争を行うことはないと考えました。
また、永遠平和のための条件として、常備軍の撤廃や暴力の禁止などを挙げ、それらが達成されれば永遠平和が叶うと説きました。
このカントの思想が、デモクラティックピース論の源流であると言われています。
Part 2:デモクラティックピース論批判
楽観的なデモクラティックピース論には批判もあります。
2−1 民主主義国家同士の戦争
1つ目に、民主主義国家同士が戦争を起こすことはあるという批判です。
太平洋戦争やフォークランド紛争、中東における紛争といった実例があるため、デモクラティックピース論には限界があるというものです。
つまり、民主主義国家同士が戦争をまったくしないというのは幻想であるという批判です。
しかしデモクラティックピース論は、民主主義国家が平和愛好的とは限らないと考えています。
民主主義国家から非民主主義国家への戦争は起こり得ると主張しています。
2−2 民主制によって戦争がないのかが不確か
2つ目に、民主主義国家が戦争を起こさない理由が民主主義にあるかはわからないという批判です。
確かに、多くの国が戦争を行っていないという傾向はありますが、それは果たして民主主義によるものであるのかは立証されていません。
また、戦争が起きない理由は他にあると考える人もいます。
例えば、グローバル化に伴う国際貿易によって、経済的相互依存性が高まったことによって戦争が起きにくくなっているのではないかと考える人もいます。
戦争が起きない原因を民主主義だけに求めるのは不十分であるということです。
Part 3:おすすめの書籍
もっとデモクラティックピース論・国際関係論を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。
Part 4:まとめ
いかがでしたか?
デモクラティックピース論をまとめると、
・特徴:構造モデル・規範モデル
・源流:カント「永遠平和のために」
・批判:民主主義国家同士の戦争・民主制によって戦争がないのかが不確か
以上です。
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最後までご覧いただきありがとうございました。