【コンストラクティビズム】国際関係論におけるコンストラクティビズムの特徴や批判などわかりやすく解説

Introduction:コンストラクティビズム(構成主義)とは?

国際関係論におけるコンストラクティビズム(Constructivism)とは、

アイデンティティ・規範・アイデアを重視し、社会的な制度や歴史的な文化によって国家間の関係が形成されていくという理論

です。

コンストラクティビズムは、日本語で「(社会)構成主義」と言います。

これは、人々が認識している世界は社会的に構成されたものであるという意味です。

コンストラクティビズムは、リアリズム・リベラリズムと並んで国際関係論における基礎的な理論の一つです。

リアリズム・リベラリズムについてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。

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本記事ではコンストラクティビズム(構成主義)を解説していきます。

【コンストラクティビズム】 要点
・コンストラクティビズム:アイデンティティ・規範・アイデアを重視し、社会的な制度や歴史的な文化によって国家間の関係が形成されていくという理論

・特徴:間主観性・非物質的要因からの説明

・批判:リアリズム・リベラリズムから脱却できていない、実証研究に向いていない

Part 1:特徴

コンストラクティビズムは、リアリズム・リベラリズムと比べて理解しづらい概念です。

ここでは、コンストラクティビズムの特徴を解説してきます。

1−1 間主観性

コンストラクティビズムを理解するための重要な概念として「間主観性」が挙げられます。

間主観性(Intersubjectivity)とは、

主観性(自分はこう思う)は、自立的に単独で機能するのではなく、共同的に影響し合いながら機能すること

です。

これを言い換えると、ある出来事が「間主観的」に認識されることで「事実」として受け入れられるということです。

政策決定者が主観的に国際関係を考え、その認識が世界的に共有されることで、その国際関係が客観的事実として存在するものかのように認識され、人々もそれに従うようになるということです。

例えば、9.11のアメリカ同時多発テロ事件を通して、中東諸国を脅威であると認識するようになりました。

9.11以前は、中東が脅威であると認識されていませんでしたが、連日の報道やメディアを通じて形成された「間主観的」な認識が共有され、事実として人々に受け入れられるようになりました。

このように「間主観性」によって事実が形成される過程があるというのが、コンストラクティビズムの考え方です。

コンストラクティビズムは、国家やパワー、アナーキーといった概念・規範も人々の意識によって相互的に共有・認識された間主観的な性質を持っていると考えました。

コンストラクティビズムは、リアリズムやリベラリズムが前提としていた国益や制度といった概念を疑うことから出発しました。

1−2 非物質的要因からの説明:アイデンティティ・利益・規範

リアリズム・リベラリズムが国益や制度を着目するのに対し、コンストラクティビズムは、非物質的要因に注目します。

先述したように、コンストラクティビズムはリアリズム・リベラリズムが前提としている概念である国益や無政府状態、制度が「間主観的」な性質を持っていると考え、物質的要因からの説明を批判しました。

コンストラクティビズムは、アイデンティティ・利益・規範といった非物質的要因を重視します。

コンストラクティビストは、国家や個人が他の主体との関係を通じて社会的に構成されたアイデンティティを持つと考えます。

そして、そのアイデンティティによって自身の利益を認識することができるため、コンストラクティビストは、アイデンティティと利益に着目しました。

またコンストラクティビズムは、アイデンティティを持つ主体の行動基準である「規範」にも着目します。

社会的に構成された国際規範が、どのように世界やアクターの意思決定に影響を及ぼしているかという側面から説明を試みます。

私たちが当たり前の事実として認識している規範やアイデンティティが社会的に構成されているという観点から国際関係を解明しようとするのがコンストラクティビズムと言えます。

Part 2コンストラクティビズム批判

コンストラクティビズムの理論にも批判があります。

2−1 リアリズム・リベラリズムから脱却できていない

コンストラクティビズム批判の1つ目として、リアリズム・リベラリズムから脱却できていないという点が挙げられます。

確かに、コンストラクティビズムが着目する規範やアイデンティティといった要素は、リアリズム・リベラリズムの中では重要視されていませんでした。

しかし、完全に排除されていたわけではなく、コンストラクティビズムの独自性があるのかという指摘があります。

そのため、コンストラクティビズムはリアリズム・リベラリズムの理論の中に取り込むことができるという批判があります。

2−2 実証研究に向いていない

コンストラクティビズム批判の2つ目として、実証研究に向いていないという点が挙げられます。

非物質的要因の規範やアイデンティティに着目するコンストラクティビズムは、どのように実証研究をするのかという疑問が残ります。

理論的には、国際関係における非物質的要因の影響を考慮することはできますが、それを実証することは困難です。

この点は、物質的要因に着目するリアリズム・リベラリズムと比較して批判される点であります。

Part 3:おすすめの書籍

もっとコンストラクティビズム・国際関係論を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。

Part 4:まとめ

いかがでしたか?

コンストラクティビズムをまとめると、

【コンストラクティビズム】 まとめ
・コンストラクティビズム:アイデンティティ・規範・アイデアを重視し、社会的な制度や歴史的な文化によって国家間の関係が形成されていくという理論

・特徴:間主観性・非物質的要因からの説明

・批判:リアリズム・リベラリズムから脱却できていない、実証研究に向いていない

以上です。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

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