IIntroduction:J・Sミルはどんな人?
ジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill)とは、
1806年〜1873年にイギリスで活躍した、政治哲学者、哲学者、古典派経済学者
です。
ミルの思想は、自由主義や社会民主主義、リバタリアニズムなどに重要な影響を与えました。
ベンサムや父親であるジェームズ・ミルの影響を受け、「功利主義論」を著したり、「自由論」、「経済学原理」などの名著を残しています。
古典派経済学の重要な一人であるミルは、経済学史を学ぶ上で欠かせない人物です。
本記事では、「自由論」の内容を解説していきます。
Part 1:内容解説:自由論
「自由論」とは、
1859年に出版された、自由についての政治学の著作
です。
自由論は、社会的自由と国家による自由の制限について書かれた著作です。
⭐️社会的自由とは何か、自由はいつ制限されるのか、といったことが述べられていきます。
ここでは、①自由の定義 ②功利主義の危険性 ③2つの自由の3つから解説していきます。
- 自由の定義:他者の効用を低下させない範囲で利益追求
- 権力が自由を制限する領域:犯罪
- 功利主義の危険性:多数派の圧政・少数派の無視
- 危害原理:自己防衛のための自由の制限は正当
- 2つの自由:言論の自由と行為の自由
2−1 自由の定義
ミルによる自由の定義は、
他者の効用を下げない限り、自分の利益を追求できる(効用を高めることができる)
です。
これは、ミルの唱えた功利主義の原理に従っています。
ミルの功利主義についてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。
功利主義に基づくと、各人は自身の効用を高めるための行動をします。
効用の改善は、社会全体の利益の増進になるため望ましいとされます。
しかし、自分にとって効用を高める行為であっても、それが他人や社会の効用を下げる場合は、制限されます。
つまり、他人に迷惑をかけないレベルで自分の利益を追求するべき、と言うことです。
これが、ミルの言う自由の限界です。
この定義に基づいて、他人に迷惑をかける犯罪は社会によって制限されるべきであると唱えました。
犯罪をすることで、犯人の効用が改善されたとしても、被害者や社会の効用が下がるため、制限されるべきということになります。
2−2 功利主義の危険性
ミルは、ベンサムの功利主義を発展させ、体系化しました。
しかし、功利主義は自由への危機が起こる可能性があるとして、その危険性について述べました。
① 多数派の圧政 ②危害原理に分けて解説していきます。
2−2−1 多数派の圧政
功利主義の基本原則は、「最大多数の最大幸福」です。
これは、より多くの人が幸福になるように決定が下されるということです。
しかしこれは、少数派の無視・多数者の圧政という危険性をはらんでいます。
ミルは、多数派ばかりが尊重される功利主義では、少数派の自由が損なわれることを危惧しました。
これは現代にも通じる問題で、マイノリティの自由が制限されていたり、配慮が欠けている問題がよくあります。
では、どうすれば少数派の自由が保証されるでしょうか。
そのために、危害原理を提唱しました。
2−2−2 危害原理
危害原理とは、
・「自己防衛」のためには、自由を制限することは正当化される。
・他者の効用を下げない限り、権力の行使は正当。
です。
危害原理から、権力行使の正統性がどの場合に認められるかを提示しました。
ミルの自由の定義でも確認したように、各人は他者の効用を下げずに利益を追求することが許されます。
多数派だけを尊重することは、権力行使の理由にはなりません。
少数派の効用が下がらないことが保証されてる限りにおいて、尊重されます。
少数派を守るために、多数派の自由を制限することは許されるべきだという主張です。
2−3 2つの自由:言論の自由・行為の自由
ミルは、2つの自由を提示しました。
それが、
① 言論の自由 ② 行為の自由
です。
2−3−1 言論の自由
ミルが言論の自由を主張した理由は3つあります。
理由
① 抑圧された言論が正確である可能性を無視している
② 一般的な意見が正確である根拠がない。意見の比較が重要
③ 両者の意見が正確でも、それらを吟味することで判断力が形成される
これは、功利主義・危害原理に基づいた考えです。
言論を弾圧することによる効用の低下と言論の自由による効用改善を加味すると、言論の自由を保証するべきであると結論づけました。
2−3−2 行為の自由
ミルは、行為の自由は言論の自由よりもデリケートであると考えました。
それは、言論よりも行為の方が他者の効用を低下させる可能性が高いからです。
ミルは、行為の自由について以下の4つのポイントを主張しました。
行為の自由
① 行為の自由は言論の自由よりも規制されるべき
② 様々な生活スタイルの存在は、社会にとって有益である
③ 他者の効用を下げない限りは、個性を尊重すべき
④ 行為の多様性によって社会の善悪が洗練されていく
このように、行為の自由は尊重されるべきであると唱えました。
行為や生活スタイルの多様性は、功利主義的に見ても有益であると考えられました。
Part 2:おすすめ本
もっとJ・Sミル・「自由論」を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。
Part 3:まとめ
いかがでしたか?
「自由論」をまとめると、
- 自由の定義:他者の効用を低下させない範囲で利益追求
- 権力が自由を制限する領域:犯罪
- 功利主義の危険性:多数派の圧政・少数派の無視
- 危害原理:自己防衛のための自由の制限は正当
- 2つの自由:言論の自由と行為の自由
以上です。
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最後までご覧いただきありがとうございました。