【覇権安定論】国際関係論における覇権安定論をわかりやすく解説

Introduction:覇権安定論とは?

覇権安定論(Hegemonic Stability Theory)とは、

世界的に圧倒的なパワーを有した覇権国がいることで国際社会が安定するという理論

です。

覇権安定論は、リアリズムの系譜である理論です。

国際関係におけるリアリズムについてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。

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リアリズム

本記事では、覇権安定論について解説していきます。

【覇権安定論】 要点
・覇権安定論:世界的に圧倒的なパワーを有した覇権国がいることで国際社会が安定するという理論

・覇権国の条件:軍事力・政治力・経済力・技術力

・覇権国の役割:国際秩序の安定

・覇権安定論の学派

 ・リアリズム学派:ロバート・コヘイン/オルガンスキー

 ・システム学派:長期サイクル論・世界システム論

Part 1:特徴

覇権安定論は、支配的大国である覇権国がいることで国際社会が安定するという理論です。

覇権安定論の特徴をまとめると以下のようになります。

1−1 覇権国の条件

覇権国は、以下の4つのパワーが圧倒的である必要があります。

軍事力 政治力 経済力 技術力

覇権国は、国際秩序を安定させるために圧倒的なパワーを有している必要があります。

それは、軍事力だけでなく経済力・政治力・技術力といった部門においても優位が必要になります。

経済相互依存性が高まった国際社会では、経済力や技術力といったパワーの重要性が高まりました。

以上の4つのパワーが圧倒的であると、覇権国として国際システムを安定させることができます。

1―2 覇権国の役割

覇権国は国際秩序の安定のためにリーダーシップを取らなければなりません。

秩序の安定やルールを執行、レジームの形成などを牽引するのが覇権国の役割です。

また、ルールを守らない国家へ指導をしたり、戦争を防止する必要があります。

ネオリアリズムの解釈では、覇権国が自国の利益と一致する場合に限って国際システムを支えるような役割を果たすと考えます。

ネオリアリズムについてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。

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ネオリアリズム

ネオリベラリズムの解釈では、覇権国が国際社会に公共財を提供し、各国の利益を最大化するために行動すると考えます。

以上のように、覇権国の役割は基盤とする考え方によって異なりますが、国際秩序の安定が最大の目的です。

1―3 覇権国アメリカ

一般的に、現実の国際社会における覇権国はアメリカであると言われています。

世界大戦を通して圧倒的な軍事力や経済力を獲得したアメリカは、国際秩序の安定する役割を持つ覇権国であると考えられます。

アメリカは、圧倒的な軍事力とGDP世界一という経済力を有するため、覇権国であると考えられています。

しかし、「アメリカはいまだに覇権国なのか?」という議論があります。

中国の台頭による相対的な経済力の低下といったアメリカの優位性が揺らいでいると言われています。

アメリカが覇権国か否かは、議論の余地があると言えます。

Part 2:覇権安定論の学派

一般的に覇権安定論は、アメリカの経済学者であるチャールズ・キンドルバーガー(Charles P. Kindleberger)「大恐慌の世界1929〜1939」の中で唱えた理論が最初であると言われています。

覇権安定論は、リアリズム学派とシステム学派があります。

2−1 リアリズム学派

覇権安定論のリアリズム学派における主要な学者は、アメリカの国際政治学者であるロバート・コヘイン(Robert Owen Keohane)であると言われています。

その後、アメリカの政治学者であるA・F・K・オーガンスキー(A. F. K. Organski)が「国際政治論」の中で唱えた権力移行理論(Power Transition Theory)と合流してリアリズム学派を築きました。

権力移行理論(パワートランジション理論)とは、

経済力・軍事力をつけた国家が台頭し、それまで優位に立っていた覇権国から権力の移行が起こることで国際関係が不安定になり、戦争の危険性が高まるという理論

です。

権力移行理論は、権力交代論と言われる場合もあります。

リアリズム学派は、本記事で説明した覇権安定論の特徴を主張します。

覇権安定論は、リアリズム的な立場から論ずることが一般的であると言われています。

2―2 システム学派

覇権安定論にはシステム学派というものがあり、主に2つのアプローチがあります。

2―2−1 長期サイクル理論

長期サイクル論(Long-cycle Theory)とは、

長期的に見ると覇権国が衰退し、新たな覇権国が登場するというサイクルを繰り返すという理論

です。

長期サイクル論は、アメリカの政治学者であるジョージ・モデルスキーGeorge Modelsk)の「世界政治における長期サイクル」の中で唱えられました。

長期サイクル論は、長期的なサイクルで覇権国が交代していく(サイクルしていく)と考えます。

そして、その移り変わりの期間は覇権国と新勢力の戦争の危険性が高まると考えます。

2―2−2 世界システム理論

世界システム論(World-Systems Theory)とは、

世界を国単位で扱うのではなく、中核・半周辺・周辺という三層構造という世界システムから世界の分業体制を解明した理論

です。

世界システム論は、アメリカの社会学者であるイマニュエル・ウォーラーステイン(Immanuel Wallerstein)によって提唱されました。

世界システム論についてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。

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イマニュエル・ウォーラーステイン 世界システム論

以上のように、長期サイクル論と世界システム論は覇権安定論のシステム学派の主要なアプローチです。

Part 3:おすすめの書籍

もっと「覇権安定論」・国際関係論を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。

Part 4:まとめ

いかがでしたか?

覇権安定論」をまとめると、

【覇権安定論】 まとめ
・覇権安定論:世界的に圧倒的なパワーを有した覇権国がいることで国際社会が安定するという理論

・覇権国の条件:軍事力・政治力・経済力・技術力

・覇権国の役割:国際秩序の安定

・覇権安定論の学派

 ・リアリズム学派:ロバート・コヘイン/オルガンスキー

 ・システム学派:長期サイクル論・世界システム論

以上です。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

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