Introduction:J・Sミルはどんな人?
ジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill)とは、
1806年〜1873年にイギリスで活躍した、政治哲学者、哲学者、古典派経済学者
です。
ミルの思想は、自由主義や社会民主主義、リバタリアニズムなどに重要な影響を与えました。
ベンサムや父親であるジェームズ・ミルの影響を受け、「功利主義論」を著したり、「自由論」、「経済学原理」などの名著を残しています。
古典派経済学の重要な一人であるミルは、経済学史を学ぶ上で欠かせない人物です。
本記事では、「功利主義論」の内容を解説していきます。
Part 1:内容解説「功利主義論」
- 功利主義:快楽を増大させて、苦痛を減少させる
- 功利主義の基本原則はベンサムと一致
- ベンサムとの違いは、「快楽の質の差」
- ベンサムの快楽計算では質を反映できず、正確に測定できない
- 尊厳のある快楽が高級である
- 満足した豚よりもやせたソクラテス
1−1 功利主義とは
「功利主義論」とは、
ベンサムが提唱した功利主義を発展させ、体系化した哲学の著作
です。
ミルは、ベンサムが唱えた功利主義を発展させ、体系化しました。
ベンサムが唱えた功利主義についてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。
功利主義(Utilitarianism)とは、
制度や行為の社会的な望ましさは、それによって生じる功利(効用)によって決まるという考え方
です。
基本原則として、
であり、効用の総計が最大化されるような行為・制度が望ましいと考えられました。
この原則を「最大多数の最大幸福」と言います。
ベンサムは、「快楽計算」によって快楽と苦痛を量的に計算し、最適解が導き出されると考えました。
ミルの「功利主義論」は、ベンサムの主張と基本部分は同じです。
しかしミルは、ベンサムの快楽計算とは異なった思想を提示しました。
1−2 ベンサムとミルの違い:快楽の質には差がある
ミルとベンサムの違いは、快楽の質の差です。
ベンサムは、快楽計算によって快楽と苦痛の大小を測定し、社会全体にとって利益になる行為をするべきであると主張しました。
一方ミルは、快楽には質的に差があるため、快楽計算によって正確に測定するのは不可能であると主張しました。
つまり、快楽計算は量的に快楽を総計するだけで、快楽の質の差を反映してないため不十分であるということです。
では、どのような快楽が質が高いのでしょうか?
ミルは、「尊厳のある快楽が高級」と考えました。
「尊厳の感覚 (sense of dignity)」を感じる快楽がより質的に優れているため、優先されるべきだと考えました。
1−3 満足した豚よりやせたソクラテス
ミルは、「満足した豚よりやせたソクラテス」と唱えました。
つまり、質の低い(尊厳のない)快楽をたくさん得て満足するよりも、質の高い(尊厳のある)快楽を少しでも得る方が大切であるということです。
これは、快楽の質の重要さを比喩したものであり、尊厳の重要性を示しています。
このようにミルは、哲学的な立場から功利主義における快楽の差を指摘し、ベンサムの議論を発展させました。
Part 2:おすすめ本
もっとJ・Sミル・功利主義論を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。
Part 3:まとめ
いかがでしたか?
「功利主義論」をまとめると、
- 功利主義:快楽を増大させて、苦痛を減少させる
- 功利主義の基本原則はベンサムと一致
- ベンサムとの違いは、「快楽の質の差」
- ベンサムの快楽計算では質を反映できず、正確に測定できない
- 尊厳のある快楽が高級である
- 満足した豚よりもやせたソクラテス
以上です。
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最後までご覧いただきありがとうございました。