【ネオリベラリズム】特徴や歴史、批判などわかりやすく解説

Introduction:ネオリベラリズムとは?

ネオリベラリズム(Neoliberalism)とは、

個人の自由の尊重や市場原理に基づいて、政府による個人・市場への介入を最低限に留めるべきという考え

です。

ネオリベラリズムは日本語で新自由主義と呼ばれています。

新自由主義はネオリベラリズムとニューリベラリズムの2種類があり、全く異なるものです。

本記事では、ネオリベラリズムの特徴や歴史、批判を解説していきます。

【ネオリベラリズム】 要点
・ネオリベラルリズム:個人の自由の尊重や市場原理に基づいて、政府による個人・市場への介入を最低限に留めるべきという考え
・特徴:小さな政府
・政策:規制緩和・民営化・社会保障の削減・減税

・歴史:オーストリア学派のハイエク、シカゴ学派のフリードマン

・イギリスのサッチャリズム、アメリカのレーガノミクス、日本の中曽根・小泉政権

・批判:格差拡大・弱者に厳しい・市場の限界

・ネオリベラリズム批判:ナオミ・クライン、デヴィッド・ハーヴェイ

Part 1:ネオリベラリズムの特徴

再度確認すると、ネオリベラリズム(Neoliberalism)とは、

個人の自由の尊重や市場原理に基づいて、政府による個人・市場への介入を最低限に留めるべきという考え

です。

ネオリベラリズムの特徴を2つのポイントから解説します。

1−1 小さな政府

小さな政府とは、

市場への介入を極力減らし、可能な限り民間部門が財・サービスを供給する政策や思想

です。

反対に、大きな政府は、政府による市場介入を強めるような思想です。

政府による市場介入とは、規制による特定産業の保護社会保障の充実などが挙げられます。

政府による規制や社会保障が充実しているほど、大きな政府であると言えます。

ネオリベラリズムは、マーケットメカニズム(市場原理)によって経済成長が達成されると考えます。

そして、政府による市場への介入は経済的な効率性を阻害し、資源配分を歪めていると考えられています。

1−2 ネオリベラルな政策

ネオリベラリズムに基づいた政策として

規制緩和:自由競争を阻害する規制を緩和

民営化:保護されている国営企業を民営化

社会保障の削減

所得税や企業への税の減税

などが挙げられます。

ネオリベラリズムは、企業間の競争を阻害するような規制を解く必要性を主張しました。

また、国営企業を民営化することで企業の市場参入を促し、マーケットメカニズムが機能するように考えました。

これは、国営企業が保護されている状態では、独占経済的非効率性が生じていると考えるからです。

そして、生活保護や年金、医療といった社会保障のサービスを削ることを求めます。

また、所得税・企業への税を減税することで労働意欲生産性の向上、設備投資の増加を目指しています。

このように、ネオリベラリズムに基づいた政策は市場原理が働くように整備しようと試みます。

Part 2:ネオリベラリズムの歴史

ネオリベラリズムが発展した歴史は、1870年代まで遡ります。

2−1 オーストリア学派:ハイエク

ネオリベラリズムは、オーストリア学派が源流であると言われています。

オーストリア学派とは、

経済学における限界革命を行った経済学者であるワルラス、メンガー、ジェボンズの流れを汲む学派

です。

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オーストリア学派に「ハイエク」という経済学者がいます。

ハイエクはネオリベラリズムを唱えたことで有名な経済学者であり、ノーベル経済学賞を受賞しました。

ハイエクは、「隷属の道」、「貨幣発行自由化論」、「市場・知識・自由:自由主義の経済思想」などの著書を通じて、ネオリベラリズム的な経済思想を主張しました。

ハイエクについてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます。

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2−2 シカゴ学派:フリードマン

ネオリベラリズムに中心的な経済学者として有名なのは、ミルトン・フリードマンです。

シカゴ学派のフリードマンは、著書である「資本主義と自由」、「選択の自由」を通じてネオリベラリズムの経済思想を主張しました。

フリードマンはノーベル経済学賞を受賞するなど、その経済思想は戦後の世界経済に非常に大きな影響を与えました。

世界恐慌後から主流だったケインズ経済学に基づいた福祉的な政策を批判し、市場原理主義を唱えました。

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2−3 各国のネオリベラリズムの政策(英米日)

フリードマンの経済思想は、イギリス・アメリカ・日本の政策にも大きく影響しました。

2−3−1 イギリス:サッチャリズム

サッチャリズムは、イギリス初の女性首相であるマーガレット・サッチャーによって行われた経済政策です。

戦後のイギリス経済は「英国病」と呼ばれる経済状況にあり、疲弊していました。

サッチャーはその状況を打開するために、ネオリベラリズムに基づいて、規制緩和や民営化といった経済政策を実施しました。

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2−3−2 アメリカ:レーガノミクス

レーガノミクスは、第40代アメリカ合衆国大統領のロナルド・レーガンによって行われた経済政策です。

イギリスと同様、1970年代のアメリカ経済は疲弊していました。

レーガンは不景気に対処するために、ネオリベラリズムに基づいて、規制緩和・民営化・減税・貨幣供給量の操作という4本柱の経済政策を実施しました。

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2−3−2 日本:中曽根・小泉政権

日本では、中曽根・小泉政権によってネオリベラリズムに基づく政策が行われました。

中曽根康弘首相は、1982年〜1987年にかけて日本専売公社・日本国有鉄道・日本電信電話公社という三公社と日本航空の民営化を実施しました。

小泉純一郎首相は、2001年〜2006年にかけて「聖域なき構造改革」として郵政民営化労働法の規制緩和などを実施しました。

このように、日本でもネオリベラリズムに基づいた政策が行われました。

各国で実施されたネオリベラリズムに基づく政策ですが、多くの批判もあります。

Part 3:ネオリベラリズム批判

マーケットメカニズムを信頼するネオリベラリズムは、様々な批判があります。

3−1 格差拡大

1つ目の批判として、貧富の格差が拡大するというものがあります。

ネオリベラリズムは市場原理を重視するため、競争によって勝者と敗者が発生します。

市場の競争で勝利した人々は多くの富を獲得することができますが、負けた人々は貧困に苦しむことになります。

競争が激化し、多くの企業が淘汰されるため、失業率も高まるという批判もあります。

実際、サッチャー政権下のネオリベラリズムに基づいた経済政策によって失業率は戦後最悪を記録しました。

ネオリベラリズムによって、競争に勝った人と負けた人の格差が大きく開く社会になります。

3−2 弱者に厳しい社会

2つ目の批判として、弱者に厳しい社会というものがあります。

ネオリベラリズムでは社会保障や福祉は削減するため、社会的弱者マイノリティにとって生きづらい社会になります。

また、セーフティネットである生活保護や年金、重要なサービスである医療や介護のレベルが下がったり、高額な費用が必要になるようになります

先述したように、市場の競争で負けた人は失業・貧困に苦しみますが、社会保障が削減されているために多くの人が救われない社会になってしまいます。

また、社会的弱者は最初から市場の競争に参加できないという場合がよくあります。

競争が激化しているのにもかかわらず、社会保障サービスがカットされるという自己責任社会であると言えます。

競争で負けて貧困に苦しんでも、自己責任であるため誰も救ってくれないような社会になるということです。

3−3 市場は万能ではない

3つ目の批判として、市場は万能ではないということがあります。

ネオリベラリズムはマーケットメカニズムを信頼しすぎており、その限界を認識していないということです。

ネオリベラリズムは競争のために民営化や規制緩和を行いますが、それを行うべき分野と行うべきではない分野があります。

単純な既得権益や産業保護による非効率性が生じている場合は、民営化が批判されることは少ないです。

しかし、「公共性・必要性が高い、生活に密着している」といった分野における民営化には、大きな批判が発生します。

例えば、水道の民営化によって料金が高騰したケースが挙げられます。

水という公共性が高い生活必需品の価格が、市場原理によって上昇することで、多くの人にとって不利益になります。

水道会社は利益を得ることができますが、貧困層は絶対に必要なサービスの価格が上昇することで生活が逼迫することになります。

このように、マーケットメカニズムに任せれば全てが良くなるというのは過信であるという批判があります。

3−4 著名なネオリベラル批判者

ネオリベラリズムを批判している有名な有識者として、ナオミクラインデヴィッド・ハーヴェイが挙げられます。

3−4−1 ナオミクライン

ナオミクライン(Naomi Klein)は、カナダのジャーナリストで「ショックドクトリン」を著したことで有名です。

ショックドクトリンは、フリードマンの経済思想やネオリベラリズム、サッチャリズムがどのように世界に悪影響を与えたかを描いたものです。

ナオミクラインは、ショックドクトリンだけではなく、「これがすべてを変える―資本主義VS.気候変動」、「貧困と不正を生む資本主義を潰せ―企業によるグローバル化の悪を糾弾する」、「楽園をめぐる闘い―災害資本主義者に立ち向かうプエルトリコ」など、資本主義・ネオリベラリズム批判を多くの作品で行っています。

3−4−2 デヴィッド・ハーヴェイ

デヴィッド・ハーヴェイ(David Harvey)は、イギリスの地理学者・政治経済学者で「ネオリベラリズムとは何か」を著したことで有名です。

彼はその中で、グローバル化するネオリベラリズムによる弊害を指摘しました。

また、『新自由主義:その歴史的展開と現在』を著し、新自由主義が世界を支配していることを危惧しました。

Part 4:おすすめの書籍

もっと「ネオリベラリズム」を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。

Part 5:まとめ

いかがでしたか?

ネオリベラリズム」をまとめると、

【ネオリベラリズム】 要点
・ネオリベラルリズム:個人の自由の尊重や市場原理に基づいて、政府による個人・市場への介入を最低限に留めるべきという考え
・特徴:小さな政府
・政策:規制緩和・民営化・社会保障の削減・減税

・歴史:オーストリア学派のハイエク、シカゴ学派のフリードマン

・イギリスのサッチャリズム、アメリカのレーガノミクス、日本の中曽根・小泉政権

・批判:格差拡大・弱者に厳しい・市場の限界

・ネオリベラリズム批判:ナオミ・クライン、デヴィッド・ハーヴェイ

以上です。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

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