【ネオリアリズム】国際関係論におけるネオリアリズムの特徴や批判、分析レベルなどをわかりやすく解説

Introduction:ネオリアリズム(新現実主義)とは?

ネオリアリズム(Neorealism)とは、

無政府状態の国際社会の前提のもと、安全保障を重視する理論

です。

ネオリアリズムは、構造的現実主義とも言われています

ネオリアリズムは、ケネス・ウォルツ(Kenneth Neal Waltz)が発展させた理論と言われています。

ネオリアリズムは、リアリズムやリベラリズムと比べて有名ではありませんが、国際関係論において非常に重要な理論です。

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リベラリズム

本記事では、ネオリアリズムの特徴、分析レベル、批判、ネオリアリズムの学派を解説していきます。

【ネオリアリズム】 要点
・ネオリアリズム:伝統的リアリズムを受け継ぎながら、より発展させた理論

・分析レベル:第1イメージ(個人)第2イメージ(国内)第3イメージ(国際システム)

・批判:安全保障の限界・小国の軽視

・学派:新古典的リアリズム・防御的リアリズム・攻撃的リアリズム・覇権安定論

Part 1:特徴:伝統的リアリアズムとネオリアリズム

ネオリアリズムの「ネオ」とは「新しい」という意味で、「新現実主義」と呼ばれます。

1−1 一般的な伝統的リアリズム批判

伝統的リアリズムは、E・H・カーやハンス・モーゲンソーらによって体系化されました。

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リアリズム

伝統的リアリズムは、

① 国際社会のアクターは主権国家だけではない

② パワーは軍事力に限らない

③ 国家の目標は安全保障だけではない

④ 国際社会は権力闘争のみではない

という4点から批判されています。

ネオリアリズムはこの批判に対抗し、リアリズム的考えから冷戦後の国際社会を説明しようとしました。

1−2 伝統的リアリズムを受け継ぐ点

ネオリアリズムは、伝統的リアリズムの中心的な考えを受け継いでいます。

ネオリアリズムは、

① アナーキー(無政府状態)の世界を前提としている

② 国家の利己的な行動原理

③ パワーの概念

④ 勢力均衡

といった点で伝統的リアリズムと一致しています。

では、伝統的リアリズムと異なるのはどのような点でしょうか。

1−3 伝統的リアリズムと異なる点

ネオリアリズムは、「国際社会のアクターは主権国家だけではない」という批判に対して、国際社会における中心的なアクターは国家であると反論し、非国家アクターの限界を指摘しました。

また、「パワーは軍事力に限らない」「国家の目標は安全保障だけではない」「国際社会は権力闘争のみではない」という批判に対し、国際社会における紛争・対立を例に挙げながら、協調的な国際関係は本質的ではないと指摘しました。

また、ネオリアリズムはミクロ経済学といった社会科学の理論を導入し、科学的な分析を行うことを試みました。

このようにネオリアリズムは、思想的基盤を伝統的リアリズムに置きながら、批判に対する反論を取り込むことで発展させました。

Part 2:分析レベル

ネオリアリストであるウォルツは、3つのイメージを用いて戦争の原因を分析しました。

これは「分析レベル」と呼ばれ、国際政治の理論として広く知られています。

2−1 第1イメージ:個人

第1イメージは、戦争の原因が「人間(個人)」にあると考えます。

これは、戦争を起こした国のリーダーや政策の決定者に戦争の原因があるということです。

行き過ぎた挑発行動や、自国の利益優先のための先制攻撃など、それを行う「人間」に戦争の原因があるというのが第1イメージです。

第1イメージ例として、ナチスドイツのヒトラーが挙げられます。

好戦的で自国の領土を積極的に拡大することを目標にしていたヒトラーは、多くの国に戦争を仕掛けました。

このような場合は、戦争の原因を「個人」に求めることが妥当であると言えます。

しかし第1イメージは、戦争の原因を個人に見出すことの限界を指摘されるときがあります。

独裁的で暴力的な国のトップが必ずしも戦争を起こすわけではないという点や、平和的な指導者が戦争を起こすこともある点が挙げられます。

2−2 第2イメージ:国内

第2イメージは、戦争の原因が「国内」にあると考えます。

国内政治の状況や政治体制、軍事システムなどに戦争の原因を求めます。

好戦的な政党が政権を担うことによって戦争に走る場合や、政権の支持率獲得のために他国への攻撃を行うケースなどが該当します。

しかし、1国の国内政治に戦争の原因を求める限界がしばしば指摘されます。

2−3 第3イメージ:国際システム

第3イメージは、戦争の原因が「国際システム」にあると考えます。

これは、国際システムの構造や国際社会に戦争の原因を求めます。

日米安保条約や冷戦、国連といった共同体など、国際社会の構造・システムに原因があるということです。

それらの関係や対立によって戦争が起きると考えます。

このようにウォルツは、3つの分析レベルを用いて戦争の原因を解明しました。

Part 3:ネオリアリズム批判

ネオリアリズムの理論にも批判があります。

3−1 安全保障の限界

ネオリアリズムは、伝統的リアリズムを受け継いで安全保障の重要性や対立的な国際関係を主張しましたが、その限界が批判されました。

グローバル化に伴う相互依存関係や貿易による経済的相互依存という事実から、安全保障の重要性が低下しているのではないかという批判です。

これは、ネオリアリズムが登場した冷戦後の国際社会よりもグローバル化が加速し、「ヒト・モノ・カネ」の国境を越えた移動が盛んになっているという背景があります。

3−2 小国の軽視

ネオリアリズムは、小国を軽視しているという批判もあります。

伝統的リアリズムのパワーや勢力均衡といった考えを受け継いだネオリアリズムは、大国中心の国際社会を前提としています。

そのため、経済力や軍事力がない小国を軽視していると批判されます。

勢力均衡や覇権で世界秩序を捉えるネオリアリズムは、パワーの小さい小国の存在が薄くなってしまうということです。

Part 4:ネオリアリズムの学派

ネオリアリズムは様々な学派に派生しています。

4−1 新古典的リアリズム(Neoclassical realism)

新古典的リアリズムは、伝統的リアリズムとネオリアリズムを統合して改良することを目指しました。

新古典的リアリズムは国際社会における国家の行動原理の説明として、「国内」に注目しました。

国際関係だけでなく、国内の政治状況やシステムに着目することで国家の行動原理がわかるということです。

これは、先述した分析レベルの第2イメージの説明と類似しています。

代表的な新古典的リアリストとして、「ランドール・シュウェラー」が挙げられます。

4−2 防御的リアリズム

防御的リアリズムは、無政府状態の国際社会においても、国家の対立が起きるとは限らないと考えます。

自己中心的な国家は自国の安全を優先的に考えるため、安全を脅かすパワーの増大を避けるということです。

積極的にパワーを増やすよりも、自国の安全が確保されているだけで十分です。

そして、協調によって自国の安全が確保できるならば、国家はそのような行動をとるというのが、防御的リアリズムの考え方です。

代表的な防御的リアリストとして「ロバート・ジャーヴィス」が挙げられます。

4−3 攻撃的リアリズム

防御的リアリズムを批判して発展したのが攻撃的リアリズムです。

攻撃的リアリズムは、国家は自国の安全よりもパワーの増大を目的として、可能な限りの軍事力増強を行うと考えます。

国家は安全を確保してもパワーの増強を止めることはなく、他国を圧倒する軍事力を確保することを目指すということです。

このような状況では、常に他国と対立し、協調的な行動が困難になるというのが、攻撃的リアリズムの考えです。

代表的な攻撃的リアリストとして「ジョン・ミアシャイマー」が挙げられます。

4−4 覇権安定論

覇権安定論とは、

世界的に圧倒的なパワー(経済力・軍事力)を有した覇権国がいることで国際社会が安定するという理論

です。

これは、冷戦の崩壊に伴う世界秩序の変化を説明しようと発展しました。

冷戦後は、圧倒的なパワーを持つアメリカを覇権国として、世界秩序安定の役割を担うということです。

代表的な覇権安定論者として「ロバート・ギルピン」が挙げられます。

Part 5:おすすめの書籍

もっとネオリアリズム・国際関係論を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。

Part 6:まとめ

いかがでしたか?

ネオリアリズムをまとめると、

【ネオリアリズム】 まとめ
・ネオリアリズム:伝統的リアリズムを受け継ぎながら、より発展させた理論

・分析レベル:第1イメージ(個人)第2イメージ(国内)第3イメージ(国際システム)

・批判:安全保障の限界・小国の軽視

・学派:新古典的リアリズム・防御的リアリズム・攻撃的リアリズム・覇権安定論

以上です。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

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