ハイエク【隷属への道】時代背景や社会主義への警鐘など、わかりやすく解説

Introduction:ハイエクはどんな人?

フリードリヒ・アウグスト・フォン・ハイエク(Friedrich August von Hayek)とは、

1899年〜1992年にオーストリアで活躍した、オーストリア学派を代表する経済学者

です。

ハイエクは20世紀を代表する自由主義の経済学者で、オーストリア学派でした。

ノーベル経済学賞も受賞しており、経済学に重要な貢献をしました。

主な著書としては、「隷属への道」「貨幣発行自由化論」などがあります。

本記事では、時代背景「隷属への道」の内容を解説してきます。

隷属への道】 要点
・時代背景:世界恐慌による自由主義への懐疑と社会主義ブーム
・隷属への道=社会主義への道:社会主義化への警鐘
・社会主義のファシズム化
・自由の定義:社会主義では、「貧困からの自由」という限定的な自由
・計画経済失敗による国民の不満蓄積
・不満を抑えるために独裁体制へ

Part 1:時代背景「世界恐慌」

「隷属への道」は、イギリスの社会主義化に対して警鐘を鳴らした著書です。

その背景として、世界恐慌が挙げられます。

世界恐慌によって各国の経済は停滞し、それぞれの政策を行いました。

アメリカでは、ケインズ経済学に基づいたニューディール政策を行い、公共事業による大規模な雇用を実現しました。

ドイツでは社会主義体制によって経済を立て直しました。

しかしイギリスは自由主義に基づいた政策を行いましたが、経済は停滞のままでした。

そこでイギリスでは自由主義への懐疑社会主義ブームが巻き起こりました。

このような世論・風潮に警鐘を鳴らしたのが、「隷属への道」です。

ケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」についてまとめた記事は以下のリンクからご覧いただけます、

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ケインズ 雇用・利子および貨幣の一般理論

Part 2:内容解説「隷属への道」

隷属への道は、社会主義の中央計画経済は、結果として国民の隷属をもたらすという意味です。

つまり、社会主義への道=隷属への道ということです。

ではなぜハイエクは、社会主義化こそ隷属への道であると言ったのでしょうか。

それは、①社会主義のファシズム化 ②自由の定義の誤認 ③計画経済による不満の蓄積 ④独裁者の誕生という4つの理由でした。

2−1 社会主義のファシズム化

ハイエクは、社会主義はファシズム的な性格を持っており、いずれは自由を奪われ、完全にファシズムに移行すると考えました。

ファシズム(結束主義)とは、

イタリアのムッソリーニ率いるファシスト党が提唱した思想で、権力による労働階級の統治と外国への侵略的政策をとる独裁体制

です。

当時、社会主義はファシズムと正反対の体制であると考えられていましたが、ハイエクは社会主義とファシズムの同一性を主張しました。

社会主義が、中央政府によって経済をコントロールすることや企業の国有化など、権力が政府に集まっていることを危惧したのです。

ちなみにこの本が出版されたのは、ファシズムは誕生する以前です。ハイエクは、社会主義の独裁的な性格を見抜いていました。

2−2 自由の定義の誤認

2つ目の理由として、社会主義者は「自由」の定義を履き違えていると主張しました。

本来の「自由」とは、政府や他者からの自由であり、規制撤廃や権力からの解放を意味していました。

しかし社会主義者は、自由を「貧困からの自由」という限定的な概念にすり替えているとハイエクは考えました。

ハイエクのような自由主義者は、政府の市場介入を最小限にするべきといった自由に基づいています。

しかし社会主義者の自由は、貧困から脱却するだけであって、他の自由が制限される可能性があるということです。

また計画経済では、貨幣ではなく物資の配給が行われます。

これは、個人の欲しいものを選ぶという個人の選択の自由が限られます

市場経済では、各人が稼いだお金で各人の好きなものを手に入れますが、計画経済では、あらかじめ決められたものが配給されるだけです。

これこそ、「自由」の意味を履き違えた制度であり、選択の自由を奪っているとハイエクは考えました。

自由の制限

2−3 計画経済による不満の蓄積

3つ目に、計画経済は国民の不満を生むという理由です。

社会主義の計画経済では、中央政府が計画的に生産量や価格を事前に決定することで、経済を循環させようとする方法です。

ハイエクのマーケットによる自由放任主義とは正反対の考え方です。

ハイエクは、計画経済には限界があり、正確で適切な生産量・価格の決定は困難であると主張します。

社会情勢の変化や気候変動によって常に状況が変化する中で、事前に決定した生産量を達成するのは困難です

例えば、予測不能な自然災害が起きた場合、事前に計画された生産量を達成できずに、経済は混乱します。

このように、政府の中央機能が適切に働かないことによって、国民の不満は政府へと向けられます

中央政府による計画経済が機能してないことによる不満が蓄積していきます。

2−4 独裁者の誕生

国民の不満蓄積の結果、政府は社会を安定させることが難しくなります。

そこで政府は、「独裁」を行い、社会の安定を図ります。

計画経済によって国民のニーズを満たせないことがわかった政府は、圧政によって不満を抑圧することに転換すると予測されました。

国民は政府の独裁によって「隷属」することになるということです。

このような理由・過程から、社会主義は結果的に国民の隷属をもたらすということです。

Part 3:おすすめ本

もっとハイエク・「隷属への道」を学びたいという人は、以下の書籍がおすすめです。

Part 4:まとめ

いかがでしたか?

「隷属への道」をまとめると、

隷属への道】 要点
・時代背景:世界恐慌による自由主義への懐疑と社会主義ブーム
・隷属への道=社会主義への道:社会主義化への警鐘
・社会主義のファシズム化
・自由の定義:社会主義では、「貧困からの自由」という限定的な自由
・計画経済失敗による国民の不満蓄積
・不満を抑えるために独裁体制へ

以上です。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

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